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Channel: 幡野広志のブログ
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軍鶏と採卵鶏を絞めて解体した話。

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軍鶏です、初めてみましたが眼光が鋭くて強そうです。
それもそのはず、軍鶏はオス同士のどちらかが死ぬまで戦う闘鶏用の鶏。
肉本来のうまみがあって、軍鶏鍋でも有名な高級ブランド鶏。
今回はこの軍鶏をさばきました。

血が苦手な人はここから先は読まない方がいいです。
コンビニのフライドチキンもスーパーの鶏肉もこの先に書く経緯があってみなさんの口に入ってます。

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一昨日、東京都あきる野市でニワトリをさばくワークショップが開催された。
このワークショップはLIFE DESIGN VILLAGEという団体が主催しており、
今年の3月に吉祥寺で開催された僕の狩猟トークショーを主催してくれた団体でもある。

講師は罠シェアリングでお馴染み五日市猟友会のイクメン猟師の小川くん。

僕は今回解体のサポートをするために参加した。
ニワトリなんてさばいたことないけど、カモは多くさばいてるから大丈夫だと思う。

参加者は3歳~58歳と幅広く、定員をオーバーした20名弱が参加した。
男女比は6対4ぐらいで、小学生以下の子どもは3人いた。

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ニワトリをさばく前にニワトリのことを10問のテスト形式で勉強した。
上の写真は小学生参加者の答案用紙。
講師が説明したものをしっかりメモしている。


卵を産むニワトリと、食肉用のニワトリは種類が違う。
卵を産むニワトリは採卵鶏、食肉用は主にブロイラーと呼ばれる。
どちらに生まれても過酷な運命が待っている。

採卵鶏はヒヨコの段階で卵を産むことのないオスは選別されて廃棄処分される。
卵を産むためのニワトリなので肉があまり付かないため、
育てても肉の収穫量が少ないので利益にならないからだ。
生まれたその日に採卵鶏のオスは死ぬ。

生き残ったメスも過酷だ、積み上げられた狭いゲージに何匹も詰め込まれる。
上のゲージから糞が落ちてくるなか卵を毎日産む。
人間で例えるなら満員電車の天井からウンコが降ってくる状態だ。

イエロー色の黄身よりもオレンジ色の黄身が新鮮で美味しいだろうと、
消費者が勘違いするので餌には着色料が入っている。

2年ほどで卵を産まなくなったら、廃棄処分される。
ブロイラーに比べ肉量が少なく肉質も硬いので、
食肉用には適さずミートボールなどの加工品になったりペットフードになったりする。

そんな大変な状態から出荷された卵が1パック198円でスーパーで安売りされる。


食肉用のブロイラーも過酷だ。

ブロイラーも満員電車のように鶏舎に詰め込ませる、運動させないためだ。
そして成長ホルモンが入った高カロリーの餌を与えられブクブクと太らせる。
自分の足で歩くことはおろか、立てなくなるほど太らせたものがブロイラーだ。
だからスーパーで売られる鶏肉は大きく柔らかく、収穫量が多いので安い。
レストランでよく見る「若鶏のステーキ」なんて生後50日前後のものだ。

鶏にとってストレスが少ない平飼いや無理のない成長をさせれば、
広い土地代などのコストが上がり、生産量が減るので販売金額が上がる。

ここまで読んで鶏かわそうって思っても、卵が1パック600円になったり、
もも肉が100g500円だったら怒るでしょ。
コンビニのチキンが700円とかするの、買わないっしょ?

激安スーパーを夕方の報道番組で特集して、安いことが良いことのように煽り、
安さを消費者が求めた結果がこれだ。

ちなみに卵のサイズのSとかMとかLとか。
これ黄身の大きさは変わらないです、でも殻の大きさは違います。
この大きさの違いは鶏の年齢です、若い鳥ほど卵が小さくなります。
LLサイズなんて産み出したら廃鶏直前です。

ちなみにペットとして飼われた鶏は10年ほど生きるそうです。
小学校でも鶏とか飼ってたと思うけど、死んだ記憶って少ないでしょ。
経済動物というのは過酷です。

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今回の鶏は軍鶏と採卵鶏の半々ぐらい。
ネットショップで調べると軍鶏肉は1kgで5000円くらいする、採卵鶏の廃鶏は1kg500円。
テストの成績上位者が軍鶏を手に入れた。

気性の荒い軍鶏も逆さにされると大人しくなる。
逆さにされても強そうだ、爪は槍のように鋭く、羽は鎧のように硬い。

僕が桃太郎ならキジなんかスカウトしないで軍鶏をスカウトする。
軍鶏2匹と人間1人が本気で勝負したら人間は負けると思う。
ただ軍鶏同士で喧嘩しちゃうんだろうけど。

小さな子どもでも逆さにすれば軍鶏を持てる。
それくらい逆さ吊りは大人しくさせることができる。

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採卵鶏の入っていたゲージに卵が落ちていた。
鶏は糞も尿も卵も同じ穴から出てくるので卵には糞がついている。
まだほんのりと暖かく、しっかりと糞の臭さがある。
うずらの卵と同じくら小さい卵があったので、まだ若い採卵鶏がいるようだ。

ちなみに鶏が毎日卵を産むのは人間でいう排卵、つまり生理なのだ。
だからオスがいようがいまいが卵を産む。

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にわとりを絞める。

絞め方はいろいろな方法があるけど今回は首を回して首の骨を折り、
首を落としてそのまま血抜きをするという方法をとった。
ちゃんと教えれば子どもでも簡単にできる。

子どもにナイフもたせて危ないって思われそうだけど、
大切なのは危ないからこそ大人がちゃんと見守って経験させることだ。
危ないからナイフから遠ざけることじゃない。
僕からすればナイフを扱ったことのない大人がナイフを持った時の方が恐怖を感じる。

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頭を落として血を抜いたらお湯につけて毛穴を開かせる。
こうすることで毛が抜けやすくなり、毛が濡れることで風で飛ばなくなる。

採卵鶏は簡単に毛が抜けるけど、軍鶏は毛が固くて抜くのが大変だった。
つぎに軍鶏を解体する機会があったらペンチと毛抜きを用意しようと思う。

毛を抜いたらバーナーで表面を炙り、細かい毛を焼く。
このときにほんのり美味しそうな匂いがする。
頭と毛が無くなると、食料っぽくなってくる。

ここから解体作業に入っていく。

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足を外す、アキレス腱を切って骨を折るようにねじればナイフが簡単に入る。
足が無くなった鶏は完全にクリスマスに出てくるような丸焼きの形だ。

もも肉、むね肉、手羽と切り分ける。
説明してあげればみんなスイスイできる。
解体なんて難しいものではないのだ、やってみれば誰でもできる。
僕だって初めて鶏をさばいた。

食べられる内臓のレバー、砂肝、心臓(ハツ)、肺(フワ)を取り出して切り分ける。
採卵鶏には卵の黄身だけの状態のものが入っている。
きんかんって呼ばれるもので甲州鳥モツ煮に必ず入っているものだ。

じつはこのきんかん、生で食べるととんでもなく美味しいんです。
濃厚な味がします、僕が今まで食べた卵の中でダントツで一番うまいです。
廃鶏のきんかんが今までの人生で一番美味いってのも皮肉な話ですけど、本当に美味しいです。
ただ生の状態で食べる機会はこういう場しかないんですよ、残念。

切り分けた肉と内臓を参加者に持って帰ってもらい、今回のワークショップは終了。

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今回のワークショップで一番印象的だったのは子どもの存在だ。
3人の子どもがいて一番年上の子が9歳か10歳くらいかな?

会場となった古民家で飼っているネコには優しく接していながらも、
大人が躊躇するような作業もしっかりとこなしていた。

自分でメモを取りながらしっかり説明を聞いていて、
でもみんなから注目されると恥ずかしがってしまうかわいい子だった。

大人顔負けの部分と、子どもらしさがある子だった。
理解がない人からすれば変わった子って言われそうだけど、僕は親の食育の賜物だと感じた。

食育が大切だ。

こういうワークショップを開催すると必ずと言っていいほど「残酷だ。」と非難される。
ビーガン主義の人に言われるのはまだ理解できる。(それでも言い返せるけど。)

鶏がどういう経緯で生きて、どういう工程で肉になるのかを知ることも理解もしないで、
鶏肉や卵を使用した料理を食べているような人に「残酷だ。」と言われると疑問を感じる。
風俗に行ってやることやった後に「こんな仕事しちゃダメだぞ。」説教しちゃうおっさんと変わらん。

そういう人たちにも食育が必要だ。

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